インターネット上での二人の対談の写真

 

新しいトラウマ理論(ソマティック・エクスペリエンシング〜以下SEと表記)

を確立したピーター・ラヴィーンと

ポリヴェーガル理論のステファン・ポージェスは、

大の仲良しのようです。

彼らの出会いのことをとても嬉しそうに話すラヴィーンを

YOUTUBEで見ました。

 

彼らが出会ったのは1970年代、

もう50年も前ですね。

ラヴィーンが、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校に

ポージェスを訪ねたそうです。

その時のエピソードの一つをラヴィーンは、

こんなふうに話しています。

「交感神経と副交感神経の同時の活性化、

特に副交感神経の過剰な状態を示唆する

臨床データを見せた。

特に副交感神経が過剰な状態を示す臨床データに、

『信じられない』

とポージェスは、言った  」

(『我が国におけるポリヴェーガル理論の臨床応用』)

 

交感神経と副交感神経が相互に補完し、

バランスをとりながら、身体の恒常性を保つ

という旧来の自律神経理論からは、

想定できないことだったのだと思います。

その信じられない、

交感神経と副交感神経(背側迷走神経)

の同時の活性化と、

副交感神経の過剰な状態が、

トラウマを説明します。

そしてポリヴェーガル理論を導いたようです。

 

ラヴィーンは、

『その時に、二人の間に種子が

植え付けられたのだろう・・・

そして20年後1994年にポージェスは

ポリヴェーガル理論を提案した・・・』

と語っています。

また、ラヴィーンは、

「ポリヴェーガル理論は、探していたパズルの最後のピースだった』と述べています。」

(『我が国におけるポリヴェーガル理論の臨床応用』)

70年代のアメリカ西海岸、

ベトナム反戦、ヒッピームーブメント、

カウンターカルチャーの華やかな時代、

混沌と豊穣な時代に、

感性豊かな二人の若い研究者、セラピストが

出会い、交流を続け、

何十年の歳月を経て、ポージェスのポリヴェーガル理論として、

ラヴィーンのSEとして結実して行ったわけです。

二人の交流、友情が、新し人間理解を生み出した、

そんな風にも言えるかも知れませんね。

 

私の方が年齢は下ですが、

同じ時代に多感な青春時代を過ごした者として

共感するものがあります。

二人は、数十年兄弟の様に交流し続け、

今もとても仲良しのようです。

ちょっと羨ましくも感じます。

 

トラウマ

彼らの出会いの中身です。

交感神経は身体活動を活性化する神経系です。

活性化した状態では、人間(動物)は活動的です。

闘争か逃走か と言う状態も生じます。

活動 的だった人が、急に内に籠る、 静かになる、

そんな経験はありませんか?

激昂していた人が、急に口を閉ざし、自分に閉じこもる・・・

これが交感神経が高い状態で、副交感神経がより過剰になった状態です。

交感神経の過剰な緊張、興奮を維持することができず、

副交感神経(背側迷走神経)が優位になって、

興奮をうちに込めたまま、シャットダウンをします。

ここにトラウマの謎があります。

 

ライオンやチーター等の捕食動物に、

他の動物が追われる時、

逃げても逃げても逃げ切れない時に、

気を失い、『死んだふり』をすることがあります。

捕食動物は病気になるのを恐れて、

死んだ肉を食べない習性があります。

餌になる動物は、死んだふりをして生き延びる可能性があります。

そしてもし捕食されても、

気を失った状態では、

苦痛が最小限に抑えられて死ぬことが可能です。

死んだふりが成功し、ライオン等がその場にいなくなると、

餌になりかけた動物は意識を取り戻し、

ブルッブルッと身体を揺すります。

身体に、神経系に残されていたエネルギー、

恐怖やショックを振り払います。

して日常に戻っていきます。

このことにより野生動物は、トラウマにはなりません。

人間は、野生動物のように、身体をゆすり、

恐怖や怒り、ショックのエネルギーを

解消することをしません。

そのエネルギーを蓄積することにより、

トラウマが起こります。

過去の体験により、蓄積されたエネルギーが、

その人のニューロセプションとして人生に影響します。

過去に危害を加えた人と似た人に怯えたり、

過剰に反応したりすることが起こります。

(続く)

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ぎり